SO0165
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

【相続法改正】仮払制度のしくみと凍結された口座の預金引き出し方法

「お父さんが亡くなってから、葬儀費用に請求書の支払いとお金がどんどん減っていく。」
「このあとの生活のこと、家族から立て替えたお金が戻ってくるか、本当に心配だ」

大切なご家族が亡くなられたあと、悲しむ間もなくさまざまな手続きに追われてしまいます。

現在の制度では、亡くなられた方の口座はすぐに凍結されて、相続人全員の同意がないとお金が引き出せないしくみになっています。
生活費などお父さまの口座からやり繰りをしていた場合、お母さまは当面のお金のやりくりに本当に困ってしまいます。また、高額な葬儀費用の支払いも誰かかが立て替えて支払うことがほとんどです。

これらの問題を解決するため、より簡単に亡くなられた方の口座からお金を引き出すことのできる制度が2019年7月からスタートします。まだ施行前ですが、メリットが多い制度ですので、内容を確認していざという時に役立ててください。

1.【2019年7月~】仮払制度で亡くなられた方の預金が引き出せる!

お父さまが亡くなられて相続が発生すると、口座が凍結されて当面の間の支払いに困ります。しっかりと準備がされていて生命保険に入っていれば、死亡保険金を受け取って色々な支払いにあてることができます。しかし、なかなか準備が行き届いてることも少なく、一時的に相続人の誰かが立て替えることになります。その対策として2019年7月からは亡くなられた方の口座から一定の金額まで、遺産分割協議が終わる前に相続人が単独で引き出せるようになります。

以下は相続時に発生する支払い例です。詳しくは3章でご説明します。

図1:相続時に発生する支払いのイメージ

2.仮払い制度とは

お父さまが亡くなられたことを告げると預金口座は凍結されます。そして現在は凍結された口座からは、相続人全員の同意がない限り、預金を引き出すことができません。相続人全員で財産をどのように分けるかを話し合った後に、遺産分割協議書を作成し、所定の手続きをすることで引き出します。
また、相続財産が預金だけの場合、遺産分割協議書を作成しなくても、相続人全員の署名と捺印があれば金融機関で引き出す手続きをとることができます。

※預金の相続について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

関連記事

いずれにしても、遺産分割協議において話し合いをしながら財産の分割について決めていくことから、一般的にすぐには終わりません。この遺産分割協議が整っていない状態でも、預金残高のうち一定の金額までは相続人が単独で引き出すことができる制度は、喪主など葬儀や相続を進める方からするととても安心できる制度です。
ただし、この預金の仮払制度を使って引き出した金額は、その相続人が遺産の一部を分割で取得したとみなされます。

2-1.仮払いの上限額を決める2つの条件

仮払い制度を使って引き出せる金額には上限があります。
一つの金融機関ごとの上限額が決まっており、次の計算式で金額を算出します。
ただし、この上限は1つの金融機関ごとの上限となりますので複数の金融機関に預金がある場合には、それぞれの金融機関の預金に対して適用できます。
またこの条件は一人あたりの上限となります。

<2つの条件>
条件①:引き出す上限=相続開始時の預金残高×1/3×法定相続分
条件②:引き出す上限=150万円

図2:仮払いの上限額の計算式

条件①の法定相続分とは、誰がどの割合で相続するのかを法律で定めたものです。
亡くなられた方の家族構成によって変わってきますので、詳しくはこちらをご覧ください。

※法定相続分について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

関連記事

2-2.仮払い制度の3つの活用例

仮払い制度を使った具体的な事例を3つ確認していきましょう。

例①:預金金額が大きく上限枠150万円に収まったもの
例②:預金金額から仮払いを計算すると上限に到達しないもの
例③:複数の金融機関で仮払いをする

葬儀費用は近年約200万円が相場と言われています。
実際には3000万円の預金があったとしても、一人の相続人が仮払いを申請しただけではまかなえませんので工夫が必要です。
このあとの3つの例をご紹介します。

【例①】

お父さまのA銀行の預金:3,000万円
相続人:お母さま・長男・長女

お母さまの仮払い金額

 条件①:3,000万円×1/3×1/2(法定相続分)=500万円
 条件②:150万円

以上から150万円の支払いが可能。

図3:例①の仮払い制度のイメージ

【例②】

お父さまのB銀行の預金:300万円
相続人:お母さま・長男・長女

お母さまの仮払い金額

 条件①:300万円×1/3×1/2(法定相続分)=50万円
 条件②:150万円

以上から50万円の支払いが可能。

図4:例②の仮払い制度のイメージ

【例③】

お父さまのA銀行の預金:3,000万円
お父さまのB銀行の預金:300万円

相続人:お母さま・長男・長女

お母さまの仮払い金額

A銀行:例①のとおり150万円
 B銀行:例②のとおり50万円

A銀行とB銀行をあわせて、200万円の仮払いが可能。

図5:例③の仮払い制度のイメージ

2-3.上限額以上を引き出す必要がある場合の対処法

上限以上の金額を引き出す必要がある場合、すでにご説明したとおり仮払制度の上限は相続人一人あたりの上限額です。よって、お母さまの仮払い枠で不足する際には、お子さんと話をしてお子さんにも仮払い申請をしていただくことをおススメします。

また、何らかの事情によりお一人だけで仮払制度の上限額以上の金額を引き出したい場合には、家庭裁判所で遺産分割の審判または調停を申し立てた上で、預貯金の仮払いを申し立てると、家庭裁判所の判断により他の相続人の利益を侵さない範囲内で仮払いが認められます。
手間とコストと時間がかかるというデメリットがありますが、上限以上の金額を引き出す必要がある際には検討します。

2-4.7月1日以降に申請した方が利用できる

相続における仮払制度が施行されるのは2019年の7月1日です。
この制度は、仮払いを金融機関に申請した日付がポイントとなりますので、7月1日以前に亡くなられた方であっても申請日が7月1日以降であれば利用可能です。

図6:仮払い制度は7月1日から使えるイメージ

3.仮払い制度を使うメリットとデメリット

相続が発生した際に、仮払制度を使うことについてのメリット・デメリットをみていきます。
基本的にはメリットが大きい制度ですが、デメリットもありますので確認しておくことが大切です。

3-1.仮払制度の3つのメリット

相続時の仮払制度のメリットは3つあります。高額な葬儀費用の立て替えリスクが無くなること、生活費を準備できること、借金等の返済ができることなど、分割協議が整うのを待たずして必要なお金をすぐに引き出すことができます。

3-1-1.葬儀費用の一時負担がなくなる

葬儀費用は一般的に喪主の方が負担することが多くなります。亡くなられてから日が浅いうちに請求が届きバタバタとする中でお金を工面して支払う必要があります。そして、後から相続人の皆に負担してもらいたいと思ってもその話し合いがうまくいかずに困ってしまうこともあります。初めから葬儀費用を亡くなられた方の預金から支払うことができれば、後の遺産分割協議等がスムーズに進むことにつながります。

※葬儀費用について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

関連記事

3-1-2. 当面の生活費をまかなえる

お父さまの口座から生活費を引き出してご夫婦で生活をされていた場合に、お父さまが亡くなられて口座が凍結されると生活費が引き出せなくなって困ってしまいます。このような時でも、仮払制度があれば一定の金額を引き出すことができるので、しばらくの間は生活に支障がでることがなくなります。

3-1-3.借金の返済ができる

亡くなられた方がどこかで借金をしていてその返済が必要だったり、入院費などの精算しなくてはならないものがある場合、仮払制度があればすぐに現金を引き出して対応することができます。相続人の方が負担することになっては大変ですので、亡くなられた方の預金から支払いができるようにします。

3-2.仮払い制度のデメリット

仮払制度を利用すると、特に使用用途を問われることもなく亡くなられた方の口座からお金を引き出すことができます。考え方によっては、ご自身の生活費や娯楽のために先に仮払い申請をしてお金を得ることもできます。しかし、軽はずみな考えで利用した場合、のちに多額の借金や保証人の事実などが見つかっても相続放棄の手続きができなくなってしまいます。

葬儀費用のうち債務控除として認められている範囲での利用であれば、相続放棄が可能ですので財産総額を把握して相続することが決まるまでは安易に制度を利用しないように気を付けることが大切です。

※債務控除について詳しくは、こちら(4章)を参考にしてください。(当サイト内)

関連記事

4.金融機関での具体的な引き出し方法

実際の仮払制度の申請方法については、現時点では施行前であることから発表されていません。このあと順次制度の詳細が決まり、発表されていきますので各金融機関の発表をご確認いただければと思います。

5.まとめ

相続における仮払制度についてご理解いただけましたでしょうか。

まだ施行前であり、具体的な引き出し方法等は発表されていませんが、このような制度がスタートし、いざという時に活用できるということを知識として覚えておくことが大切です。
仮払い金額には1金融機関あたりの上限があることもお伝えしましたので、亡くなられた直後のことを考えて預金を複数の金融機関に分割しておく、複数名の相続人で仮払いをする準備を整えるなども大切になります。
いずれにしても遺産分割協議が整う前の仮払いですので、口座が増えると手続きが煩雑になるなどデメリットもあるため、対策のしすぎには注意が必要です。

また、3章でご説明したとおりメリットは大きいものの、安易に考えて相続放棄ができなくなるなど後悔することにつながりかねませんので、制度活用は良く考えておこないましょう。
 
最新情報は随時アップしていきますので、このページをブックマークしていただき、定期的にチェックをしていただけると幸いです。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
相続対策・相続税申告で損をしたくない方へ

相続税の納税額は、その申告書を作成する税理士により、大きな差が生じます。
あなたが相続対策や相続税の申告をお考えであれば、ぜひ当税理士法人にご相談ください。
絶対に損をさせないことをお約束します。

OAG税理士法人が選ばれる4つのポイント
選ばれる4つのポイント
  • 相続税の申告件数 年間850件以上の実績
  • 創業30年の実力と安心感
  • 多くの専門書執筆が示す「ノウハウ」
  • 相続に関わる士業とのワンストップ連携
OAG税理士法人に依頼する3つのメリット
  • 考え方に幅のある「財産評価」を知識とノウハウで適切な評価をする
  • 遺産分割を次の相続(二次相続)も視野に入れ、税額軽減の創意工夫をする
  • 専門用語を使わないお客様目線の対応
【お電話でのお問い合わせ・ご相談はこちら】

初回のみ無料面談を実施していますので、まずお気軽にお問い合わせください。

お気軽にお問い合わせください
【スマートフォン、パソコンからのお問い合わせ・ご相談はこちら】

SNSで最新情報をチェック

コメントを残す

相続手続きでお困りの方へ