
株式譲渡をしたら確定申告をしよう!判断基準とお得な制度を知ろう
株式投資をはじめて1年目は順調に終わりそうだ。
決して多くとは言えないが少しばかりか利益が出ていて、とてもうれしく思っている。
最近、インターネット上でも「確定申告」という文字を見るようになってきたけれど、自分も利益がでたら確定申告をしなきゃいけないなぁ。でもどうしたらいいんだろう。
毎年、お正月が過ぎると「確定申告」という言葉をよく耳にしたり、雑誌の表紙でも見ていたような気がするが、サラリーマンにとってはあまりなじみのない言葉だし、やったこともないからどうしよう。。。
誰か知ってる人に聞いてみよう。
確定申告の直前に気付いて慌てる方、今から気付いていてゆっくり準備する方もいると思いますが、はじめて対応する方は、そもそも自分が対象かどうか分からないですよね。
ここでは、お給料以外に株式の譲渡(売却)があった場合に、知っていて損はない確定申告の情報をお伝えします。
どんなときに確定申告をしなければいけないのか、また、確定申告をすることによって税金が戻ってくるのかどうか、気になりますよね。
この記事を読みながら「私は特定口座だから不要(分からない方は読み進めてください」」と思った方、実は特定口座の方でも確定申告をした方が良いケースがありますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
1.株の売買をする人の確定申告が必要かどうかの判断基準
サラリーマンが給与でもらう所得については、会社で年末調整をするため会社が本人に代わって税金を計算して納税をしてくれます。よって、確定申告をしなくても大丈夫なのです。しかし、給与所得者であっても確定申告が必要なケースがあります。その一つが株式の売買による利益が出た場合です。
1-1.確定申告が必要な人は、主たる給与以外に20万円以上の所得がある方
給与に加えて株の取引などで利益が出た方は、確定申告が必要となります。
この基準は、単純に株の売買した利益が20万円以下なら確定申告が不要、と言えないため注意しましょう。
(給与を1ヶ所からもらっている方)
・給与所得及び退職所得以外に「20万円を超える所得」がある場合
(給与を2ヶ所以上からもらっている方)
・主たる給与所得及び退職所得以外に「主たる給与以外の給与+20万円を超える所得」がある場合
(参考)
給与所得者のうち年間収入額が2,000万円を超える場合も確定申告が必要
図1:給与所得と株式等の利益による、確定申告の考え方
1-2.主たる給与以外に20万円以上の所得がある方で、確定申告を不要にする方法
給与所得及び退職所得以外の所得の合計額を考える際には、次の項目は考えないことになります。
つまり、これらの条件を満たす場合は、確定申告が不要となります。
・上場株式等の配当や少額配当などで確定申告をしないことを選択したもの
・「特定口座の源泉徴収あり」を契約し、この口座内の株式の譲渡などによる所得
※特定口座:証券会社が確定申告の書類を準備してくれる
図2:株の証券口座の種類と確定申告の考え方
1-3.株式譲渡があった場合の確定申告の考え方
株式譲渡があった場合には、他の所得と区分して税金を計算する「申告分離課税」となります。この申告分離課税は原則、自分で確定申告をしなくてはいけません。そして、株式譲渡は、平成28年分から「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等に係る譲渡所得等の金額」に区分され、それぞれ別々の申告分離課税で税金の計算をします。
図3:株式譲渡の損益計算式
2.株式譲渡があっても確定申告をしなくていい3つのパターン
株式譲渡があった場合、基本的には「申告分離課税」で確定申告をする必要がありますが、次の場合には、確定申告は不要です。
2-1.年間を通して株式譲渡の損失が出ている場合
「上場株式」「一般株式」の各グループで、それぞれ譲渡損失が出た場合は、給与所得以外の所得が20万円以下になるので、確定申告の必要はありません。
そして、「上場株式」「一般株式」の各グループそれぞれの譲渡による赤字は、他の株式のグループの黒字と相殺できません。もちろん、給与所得などの他の所得とも相殺できません。基本的には、その年の株式等の譲渡による赤字は切り捨てられます。
2-2.年間を通して株式等の譲渡益が出て「特定口座で源泉徴収あり」を選択している場合
株式投資をはじめるには、まず証券会社で口座を開設します。その際には、①特定口座(源泉徴収あり)、②特定口座(源泉徴収なし)、③一般口座 の3種類の中からどの口座にするか選択しなくてはいけません。株式の取引をする方の多くは、確定申告をしなくても良くて便利な「①特定口座(源泉徴収あり)」を選択することが多いのですが、特定口座内で取り扱えるのは「上場株式」に限られる点は注意が必要です。
(メリット)
・①特定口座(源泉徴収あり)を選択する場合、確定申告をしなくても良くなる
・特定口座内の上場株式の配当は、自動的に上場株式の譲渡損と相殺(損益通算)してくれる
(損益通算については後の3-1で説明しています。)
(デメリット)
・譲渡益が20万円以下の場合にも、強制的に税金(所得税・住民税)が徴収される
図4:損益通算イメージ(上場株式の譲渡損失と配当)
2-3.NISA口座で取引して譲渡益が出ている場合
NISA(少額投資非課税制度)とは、口座内の少額上場株式の譲渡益や配当金を一定額非課税にする制度です。譲渡益や配当金が非課税になるので、確定申告の必要はありません。
株式等の譲渡益や配当金が非課税になる反面、デメリットとしては、損失が出た場合でもその損失はなかったものとみなされるため、後の3-1で説明する上場株式等の譲渡損失に係る「損益通算」及び「繰越控除」の対象にはなりません。
3.確定申告をしなくても良いが、した方がオトクな3つのパターン
確定申告の必要がないからと言って、確定申告をしてはいけないということではありません。
次のような場合には、確定申告をした方がいいでしょう。
3-1.「上場株式等」で譲渡損が出た場合は、損益通算と繰越控除を
「上場株式等」の譲渡損失がある場合には、確定申告することによって、「上場株式等の譲渡損失に係る損益通算及び繰越控除」という特例の適用を受けることができます。
3-1-1.譲渡損失があった場合に、損益通算をした方が良い場合
つまり、上場株式で1年をとおして譲渡損失があった場合には、その金額の確定申告をすることによって、該当年分の上場株式に係る配当等と相殺することができます。これを「損益通算」といいます。そして、損益通算してもまだ損失が残る場合には、その損失の金額を、翌年以後3年間にわたって上場株式の譲渡利益と上場株式の配当と相殺することが可能です。これを「繰越控除」といいます。この繰越控除も確定申告をしないと適用がありません。
図5:譲渡損失3年間の繰越控除
3-1-2.譲渡損失があった場合に、損益通算をしない方が良い場合
専業主婦のような夫の扶養に入っている人が、特定口座(源泉徴収あり)で株の譲渡をしている場合には、注意が必要です。
特定口座(源泉徴収あり)で取引をしている場合、譲渡益がたとえ1,000万円あったとしても、確定申告をしなければ、妻の所得はカウントされず0円となり、年間の所得が38万円以下となり夫の扶養となります。しかし、1年目に株式の譲渡損200万円を確定申告して、翌年以降に繰越し2年目に株式の譲渡益が100万円出た場合には対応が必要です。
特定口座で源泉徴収されている税額を還付するために確定申告をすると、次のような課題が発生します。
(妻の所得)
× 譲渡益100万円-繰越控除100万円=0円
○ 繰越控除前の100万円 ※所得が38万円を超えてしまい、夫の扶養から外れてしまう。
妻が還付される税額と、扶養から外れて夫が負担する税額との比較で考えるべきでしょう。
3-2.複数の特定口座(源泉徴収あり)で、利益と損失がそれぞれある場合
特定口座(源泉徴収あり)を複数所有している場合、申告するかどうかは口座ごとに選択できます。しかし、一方の口座で譲渡益が出て、もう一方の口座では譲渡損があった場合には通算がされません。1つの口座であれば通算されますが、2以上の場合は確定申告をして利益と損失を相殺し、還付を受けることになります。
例)A口座 譲渡益50万円、配当10万円
B口座 譲渡損20万円、配当5万円
上記の場合、A口座の譲渡益50万円、B口座の譲渡損20万円、配当5万円を申告して、A口座で払いすぎた税金を還付してもらうことができます。そして、上場株式の譲渡所得 50万円-20万円+5万円=35万円(所得38万円以下)になり、A口座の配当所得を申告しないことによって、扶養から外れることもありません。
ここで一度申告をした内容は、後で変更することは出来ませんので、どの口座を申告するのか慎重に吟味しましょう。
3-3.配当控除を受ける場合
上場株式の配当については、大口の株主等を除いて基本的には源泉徴収されているので、確定申告をする必要がありません。しかし、配当所得については「申告分離課税」と「総合課税」のどちらかで申告することを選択できます。
総合課税とは、各種所得の金額を合計して所得税を計算するというものです。サラリーマンの場合、給与所得と配当所得を合算して、所得税の計算をします。そして、総合課税の対象とした配当所得については、配当控除という控除が受けられます。
ちなみに、申告分離課税を選択した場合には、上場株式等の譲渡損失との「損益通算」が可能ですが、配当控除の適用はありません。
源泉徴収での税率は所得税と住民税合わせて20.315%に対して、総合課税の税率は7.2%~になっています。給与所得がそれほど多くない場合は、総合課税で申告をした方が有利です。
申告分離課税の場合には、源泉徴収税率と同じ20.315%なので、所得が695万円を超え、上場株式等の譲渡損失がない場合には、あえて申告する必要はないでしょう。
4.確定申告書は国税庁のホームページで簡単に作成できます!
ここまでで、確定申告をした方が有利だと判断したら、さっそく確定申告書を作成してみましょう。最近では、国税庁のホームページがとても充実していて、それを利用すれば簡単に確定申告書が作成できます。
4-1.まずは、必要書類の準備から
確定申告書を作成する前に、まずは以下の書類を準備してください。
・給与所得、公的年金などの源泉徴収票
・特定口座年間取引報告書(一般口座の場合は、ご自身で1年間の取引金額を集計する必要があります)
・還付先の金融機関の口座番号(本人名義に限る)
・認め印
図6:源泉徴収票
図7:特定口座年間取引報告書
図8:口座番号と認め印
4-2.必要書類がそろったら、国税庁の確定申告作成コーナーへ
国税庁の「確定申告作成コーナー」では、画面案内に従って必要事項などを入力するだけで、確定申告書を作成することができます。e-Taxを利用しなくても、作成した確定申告書をプリントアウトし、印鑑を押し、必要書類を添付して税務署へ郵送すれば、提出完了です。確定申告を初めて作成する方でも、とても分かりやすくなっていますので、ぜひチャレンジしてみてください
図9:確定申告書等作成コーナー
5.最後に
株式の譲渡がある場合でも、特定口座(源泉徴収あり)を利用している場合は、基本的には確定申告の必要はありません。
しかし、確定申告をした方が節税になる場合もあります。
手間とご自身が得をすると感じる損益分岐点のようなポイントは難しいですが、手間だと感じるのは慣れてない数回の確定申告だけです。確定申告は「めんどうだ」「難しい」というイメージが、実際にはあると思いますが、ぜひ、国税庁のホームページにある「確定申告作成コーナー」を利用してみてください。
きっと、意外と簡単!と思うはずです。