YI0032
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket

遺留分侵害額請求権で何ができるの?侵害された相続財産の取り戻し方

「父が亡くなった。父と同居していた兄は、父から贈与も受けていたはずなのに、遺言書においても兄に有利なことばかり書かれていた。妹の私は、ほとんど相続できるものがないなんて、到底納得できない。私は確か、遺留分という権利を主張できるはずだと思うが、法律が改正されているようでよく分からない。私はもう相続することを諦めなければならないのだろうか・・・」

ご自身が相続できたはずの財産が、生前贈与や遺言書によって相続できなくなってしまったら、黙って納得することなどできないですよね。

あまりに理不尽すぎる不公平な内容で、相続できる最低限の割合である遺留分が侵害された場合は、遺留分の権利を主張することで、ご自身の相続分を取り戻すことができます。

遺留分を主張する権利を「遺留分侵害額請求権」といいますが、これは2019年施行の民法改正によって、今までの「遺留分減殺請求権」から変更された新しい規定です。

本記事では、旧法と異なる遺留分侵害額請求権の考え方、具体的な請求できるケース、請求の方法などを分かりやすく説明していきます。

1.遺留分侵害額請求権は2019年7月1日以降の相続で主張できる

遺留分は、すべての相続人の方に保障されているわけではありません。保障されている方は、奥さま、お子さん(すでに亡くなられた場合はお孫さん)、ご両親(すでに亡くなられた場合は祖父母)となります。

また、具体的な遺留分の割合は、図1のようになっており、相続人がお子さんのみで2人の場合、1/2×1/2で1/4ずつの遺留分が保障されることになります。

図1:相続人と遺留分の割合
相続人と遺留分の割合

※遺留分について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
関連記事

遺留分を下回った分け方に納得できない場合、多くの財産を相続で引き継いだ、もしくは生前贈与された相手に対し、侵害された相続人の方が「遺留分侵害額請求」をすることによって、遺留分に見合う金銭を取り戻すことができます。

遺留分侵害額請求権は、遺言書よりも優先される権利です。

遺留分侵害額請求権は2019年7月1日以降に発生した相続において適用されることになり、7月1日よりも前の相続については、以前の規定である遺留分減殺請求権が適用されることになります。遺留分を請求した日では判断されるのではありませんのでご注意ください。

図2:権利を侵害された場合は「遺留分侵害額請求権」が主張できる
遺留分侵害額請求権を主張

図3:2019年7月1日以降に発生した相続では「遺留分侵害額請求権」
2019年7月1日以降に発生した相続では「遺留分侵害額請求権」

2.以前の遺留分減殺請求権と異なる2つのポイント

遺留分侵害額請求権が「遺留分を取り戻せる権利」であることは、以前の遺留分減殺請求権と同じです。

民法改正で何か変更されているのか、2つのポイントに絞ってご説明いたします。

2-1.遺留分はすべて金銭で受け取る

たとえば、相続財産が不動産と現金だった場合、1/4の遺留分を請求すれば、以前の遺留分減殺請求の基本的な考え方は「不動産の権利も1/4、現金も1/4支払うこと」であり、相続財産そのものに対する権利を請求する意味合いが強いものでした。

遺留分を請求する方が「この財産がほしい」と指定することはできず、不動産が共有名義となって権利関係が複雑になるデメリットがありました。

改正後の遺留分侵害額請求では、遺留分はすべて「金銭で支払うこと」になりました。

そのため、不動産などが共有名義になるリスクを回避しますが、遺留分を請求された方は相当の金銭を用意しなければなりません。

支払いの猶予を求めることができる制度もできましたが、支払いに応じるには、相続した財産を現金化しなければならないリスクを背負う可能性があります。

図4:遺留分侵害額請求では金銭で遺留分をもらう
遺留分侵害額請求では金銭で遺留分をもらう

2-2.10年前の生前贈与までが請求の対象

多額の生前贈与をしたことによって、本来の相続財産が減少してしまった場合、生前贈与された金額を相続財産に戻し入れて、遺留分の計算をすることができます。

この考え方は以前と変わりませんが、改正前は、何年前の生前贈与でも戻し入れることができましたが、改正後は「亡くなられる10年以内」の生前贈与に限られることになりました。

相続人以外の方への生前贈与も対象ですが、対象となるのは「亡くなられる1年以内のもの」に限られます。

また、遺留分を侵害することを分かって受けていた生前贈与については、この期間制限はなくなります。

よく混同してしまうのが、相続税を計算するときに相続財産として戻し入れる生前贈与は「3年以内の生前贈与」が対象となります。

また、「マイホーム購入の頭金を出してもらったから、その分、相続する財産を減らす」などの特別受益に該当する贈与については、何年前の生前贈与でも構いません。特別受益とは、相続人の間で不平等感を調整するための考え方です。

※特別受益について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
関連記事

図5:何年前の生前贈与を戻し入れて考えるか
前年前の生前贈与を戻し入れて考えるか

3.【具体例】遺留分侵害額請求権をする2つのケース

遺留分侵害額請求をおこなうことができる具体例を確認していきます。ご自身のケースと重ね合わせてご確認ください。

3-1.ケース①:不公平な内容の遺言書が実行された

「全財産をすべて長男に相続させる」「現預金はすべて第三者へ遺贈する」「財産のすべてを慈善団体に寄付する」といった内容の遺言書が残されていて、相続できる財産が全くない場合、もしくは著しく少なかった場合が該当します。

ご自身の遺留分を計算して、それを下回る額しか相続できない場合は、多くの財産を引き継いだ相手方に遺留分侵害額請求権を主張することができます。

3-2.ケース②:生前贈与によって相続財産が大幅に減少した

「生前、兄の子供だけに多額の金銭を贈与していた」「内縁関係の女性がいて、財産を贈与していた」といった理由で財産が減少していたら、当然、相続できる財産は少なくなってしまいます。

遺留分は、すでに生前贈与された財産について、もとに戻したと仮定して「生前贈与分を含めた相続財産をベース」として計算することができます。

実際に金銭などを戻す必要はなく、元々あった財産と仮定して考えるイメージです。

4.時効に注意!遺留分侵害額請求権を主張できる期間

遺留分侵害額請求は、期限内に行わないと、時効により権利を行使することができなくなってしまいます。

ケース①のように不公平な内容の遺言書によって遺留分が侵害されている場合は、亡くなられてから1年が時効となります。

また、亡くなられた事実も伝えられず、遺言書の存在をまったく知らされていなかった場合は相続発生から10年で時効となります。

ケース②のように生前贈与により相続財産が少なくなってしまった場合は、生前贈与により遺留分を侵害されていることを知った日から1年、もしくは生前からその事実を知っていた場合は、亡くなられてから1年が時効となります。

※遺留分の時効について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
関連記事

5.遺留分侵害額請求の方法は遺留分減殺請求と同じ

遺留分は相続人の方の相続できる最低限の権利を保障するものであり、適切な手順を踏んで請求すれば、必ず貰えます。まずは、遺留分侵害額請求する意思を書面にし、内容証明郵便で相手方に送ってください。これで遺留分の時効を止めることができます。

あとは相手方が請求に応じて遺留分を支払う、もし話し合っても支払いに応じないようであれば、裁判所の手続きを踏んで「調停」、それでも解決しなければ「訴訟」へと進むことになります。

遺留分に関しては「そもそもの財産総額が分からないので遺留分がいくらかも分からない」、「亡くなられた方が生前贈与をしていた事実は知っているが、証拠はなく、正確な金額も分からない」、「遺留分を請求しても相手が素直に応じてくれない」など、様々なトラブルが発生する可能性があります。

トラブルに発展してしまった場合の相談先としては弁護士がおススメです。解決の糸口を見つけてもらえるかもしれません。

※遺留分の請求手順について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
関連記事

図6:遺留分侵害額請求の流れ
遺留分侵害額請求の流れ

6.まとめ

遺留分侵害額請求権は、遺留分が保障されている相続人の方に当然に認められている権利です。正当な請求であれば、遺留分は必ず取り戻せますが、話し合いがこじれると、調停や訴訟といった裁判手続きが必要になってしまいます。

揉めてしまえば、弁護士に相談する必要が生じますが、そうならないように、十分な話し合いをして解決策が検討できるとよいですね。

相続が発生した時期によって、改正前の規定が適用されるのか、改定後の規定が適用されるのかが異なります。

遺留分侵害額請求権が適用される場合は、財産そのものを貰うのではなく、すべて金銭で支払われることになります。不動産がほしいなどの指定をすることはできません。

また、生前贈与については、改正前は何年前の贈与であっても、遺留分の計算に含めることができましたが、改正後は10年前までと限定されました。

遺留分が支払われると相続税の課税対象となるケースもありますので税務に絡むことは税理士にご相談いただくとよいでしょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Pocket
相続対策・相続税申告で損をしたくない方へ

相続税の納税額は、その申告書を作成する税理士により、大きな差が生じます。
あなたが相続対策や相続税の申告をお考えであれば、ぜひ当税理士法人にご相談ください。
絶対に損をさせないことをお約束します。

OAG税理士法人が選ばれる4つのポイント
選ばれる4つのポイント
  • 相続税の申告件数 年間850件以上の実績
  • 創業30年の実力と安心感
  • 多くの専門書執筆が示す「ノウハウ」
  • 相続に関わる士業とのワンストップ連携
OAG税理士法人に依頼する3つのメリット
  • 考え方に幅のある「財産評価」を知識とノウハウで適切な評価をする
  • 遺産分割を次の相続(二次相続)も視野に入れ、税額軽減の創意工夫をする
  • 専門用語を使わないお客様目線の対応
【お電話でのお問い合わせ・ご相談はこちら】

初回のみ無料面談を実施していますので、まずお気軽にお問い合わせください。

お気軽にお問い合わせください
【スマートフォン、パソコンからのお問い合わせ・ご相談はこちら】

SNSで最新情報をチェック

コメントを残す