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相続の「配偶者居住権」とは?奥さまが相続で自宅と生活費を得る方法

「旦那が亡くなったあとも自宅に住み続けたいけれど、自宅を相続すると今後の生活資金を相続できなくなって困ってしまう。どうしたらいいのかなぁ」

旦那さまの財産が5,000万円で、財産の内訳がご自宅の2,000万円と現金の3,000万円の場合には、奥さまとお子さんが相続人となると今後の生活に不安がでてきますよね。

具体的には、法定相続分で考えると奥さまがご自宅を相続すると現金は500万円の相続となるため、今後の生活費をどうしたらよいかと不安になります。

このようにご自宅に住み続けながら、今後の生活をどうしていけば良いのかお悩みではないでしょうか。

こういったケースは珍しくないことから、平成30年の民法改正において、残された奥さまの生活基盤をより確実に守ることを目的とした「配偶者居住権」という制度が新たに創設されました。

本記事では、配偶者居住権の概要とメリット、利用するための手順について詳しくご説明いたします。

1.配偶者居住権とは配偶者が相続後に自宅に住み続けられる権利

配偶者居住権とは、旦那さまの相続が発生したときに、旦那さまが所有するご自宅に住んでいた奥さまは、今後もずっとそのご自宅に住み続ける権利を持つことをいいます。ただし、期間を定める場合もあり、その際には期間満了まで住むことができます。

奥さまがご自宅を相続された場合にはこのようなことを考える必要はありませんが、奥さまはご自宅を相続されなくても、そのご自宅に家賃等を支払うことなく住み続けることができるという権利です。

つまり、ご自宅をお子さんが相続しても、追い出されたり、勝手にご自宅を売却されて住む場所がなくなるといったことが無くなり、安心してご自宅に住み続けられる権利です。

今まではご自宅を所有するかどうかという考え方しかありませんでしたが、配偶者限定ではありますが居住する権利が新たにできました。

なお、奥さまのご年齢や、旦那さまとの婚姻期間などに関する要件は特にありません。

図1:所有権と居住権の関係
所有権と居住権の関係

2.配偶者居住権は2020年4月以降の相続で利用できる

配偶者居住権の制度はすでに制定されていますが、実際に利用できるのは2020年4月1日以降に発生した相続からとなります。

旦那さまがご健在であり、将来の相続に向けた対策としてご確認いただけると有効的です。

3.配偶者居住権には長期と短期の2つの考え方がある

配偶者居住権には2つの考え方があり、居住権の継続する期間によって「短期と長期」があります。

本記事では、分かりやすく区別するために「配偶者短期居住権」と「配偶者(長期)居住権」という表記にしていますが、制度上は、短期を「配偶者短期居住権」、長期を「配偶者居住権」といいます。

配偶者短期居住権:すべての配偶者が得られる権利
配偶者(長期)居住権:登記をすることで得られる権利

図2:時間軸でみる2つの配偶者居住権
時間軸でみる2つの配偶者居住権

3-1.配偶者短期居住権は誰もが取得できる権利

配偶者短期居住権は、奥さまであれば誰もが取得できる居住権となります。

配偶者短期居住権が得られる期間は、相続が発生してから6ヶ月が経過する日まで、もしくは遺産分割協議が成立する日までの間となります。この間であれば無償で居住できる権利が得られます。

奥さまが相続放棄をされた場合や、遺言等で第三者に遺贈をした場合でも6ヶ月間は住み続けることができますのでその間に新たな住居を検討することになります。

配偶者短期居住権は、奥さまにとって当然の権利となりますので、配偶者であること以外の要件は何もありません。

3-2.配偶者(長期)居住権は3つ方法で権利を得る必要がある

配偶者(長期)居住権は、権利を得てから奥さまがお亡くなりになるまで、ずっと権利が継続するものになります。

ただし、配偶者短期居住権は奥さまにとって当然の権利であり要件もありませんでしたが、配偶者(長期)居住権は遺言や遺産分割協議等により奥さまが権利を得ることを決定する必要があります。

また、配偶者(長期)居住権を得るには、所有権登記と同じような「居住権登記」をすることが義務化されます。

配偶者(長期)居住権の権利を得ることができるのは、次の3つのケースです。

3-2-1.遺言によって指定されている

亡くなられた旦那さまが遺言書を作成されていて、遺言書の中で所有権を奥さまが相続しなくとも、奥さまには配偶者居住権を取得させる旨の記載をしている場合には取得できます。

このように遺言書に記されている場合には、他の相続人の同意を得る必要はなく奥さまは配偶者(長期)居住権の権利を得ることができます。

図3:遺言書で配偶者居住権を記す
遺言書で配偶者居住権を記す

※遺言について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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3-2-2.遺産分割協議で同意が得られた

相続人全員が参加して相続財産をどのように分割するか話し合う遺産分割協議において、奥さまが配偶者(長期)居住権を得ることの合意がなされれば権利を得ることができます。

所有権はお子さんが持ち、奥さまが配偶者(長期)居住権を持って住み続けることを合意することになります。

図4:遺産分割協議で配偶者居住権の同意をする
遺産分割協議で配偶者居住権の同意をする

※遺産分割協議について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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3-2-3.家庭裁判所による審判が下された

遺言がなく、遺産分割協議においても奥さまが配偶者(長期)居住権を得ることが合意できない場合には、家庭裁判所に申立をおこない審判で決めてもらうことができます。

奥さまから管轄の家庭裁判所に対して、配偶者居住権を取得したい旨を申し出ます。

家庭裁判所の審判では、配偶者居住権を設定することが他の相続人にとって不利益となることはないか、奥さまが今後安定した生活を維持するために居住権が必要なのかどうか、といった観点で判断されます。

家庭裁判所の審判が下れば、他の相続人の同意がなくても、配偶者(長期)居住権を取得することができます。

図5:配偶者居住権の取得を申し立てる
配偶者居住権の取得を申し立てる

4. 配偶者(長期)居住権を得る4つのメリット

配偶者(長期)居住権は、配偶者だけに認められた権利です。

配偶者居住権が認められれば、どのようなことがあろうと、奥さまが突然ご自宅から追い出されるようなことはありませんので、安心して住み続けることができます。

4-1.亡くなるまで権利は存続する

配偶者(長期)居住権の権利期間が遺産分割協議や遺言などで定められた場合はその期間となりますが、期間の定めがない場合には、ずっとご自宅に住み続けることができます。

お子さんが所有権を相続した場合も、お子さんから家賃等を請求されることもなく、住み続けることができます。

配偶者(長期)居住権は配偶者だけが得られる権利ですので、奥さまが亡くなられた際にはその権利は消滅します。奥さまが得た配偶者(長期)居住権の権利を誰かに相続したりすることはできません。

4-2.登記することができる

配偶者居住権を得た場合、所有権登記と同じような「居住権登記」をすることが要件となります。不動産の登記簿謄本に「配偶者の居住権」が新設されて、そちらに記載されることになります。

登記する対象は「家屋」だけであり「土地」に設定することはできませんが、家屋に配偶者居住権が登記されていれば、いくらその土地の所有者であっても、勝手に家屋を処分することはできなくなります。

登記簿謄本に記載されることにより、何かあった際にも公式に権利を示すことができます。

また、配偶者居住権が設定された家屋を含む不動産の所有権は「負担付所有権」となります。

例えば、ご自身がご自宅の配偶者(長期)居住権を得て、長男が土地、家屋ともに所有権を相続した場合には、長男は自由に土地や家屋を売却したりできません。

奥さまが亡くなられるまで、長男は所有しているが自由に取り扱えない状況となります。

図6:配偶者居住権は登記する
配偶者居住権は登記する

4-3.自宅を確保した上でその他の財産も取得できる

配偶者(長期)居住権を利用すると、例えば2,000万円であるご自宅(土地と家屋)の場合、配偶者(長期)居住権の価値を1,000万円とみなし、残りの1,000万円を負担付所有権として評価することができるようになります。

旦那さまが亡くなられて奥さまが2,000万円の価値のご自宅をお一人で相続してしまうと、相続財産の総額によっては現金があまり相続できないケースや、差額をご自身の貯蓄から支払うケースもあります。

そんな時に配偶者(長期)居住権を利用できれば、配偶者居住権でご自宅の1,000万円の部分のみ引き継ぎ、他に、現金を相続するといった工夫をすることができ、奥さまの生活が安定します。

【事例】
相続人:お母さま(配偶者)、長男、長女
相続財産:ご自宅(2,000万円)、預貯金(3,000万円)、法定相続分で分割

<配偶者(長期)居住権の開始前>

旦那さまの相続時に、旦那さまが所有するご自宅に安心して住み続けるためには、奥さまがご自宅を相続する必要があります。

そうなると、奥さまは2,000万円のご自宅と500万円しか現金を相続することができません。

この場合、住む場所は安心ですが、現金が500万円だけとなると今後の生活費に不安が残ります。

図7:現状の法律で分割すると不動産が大半で現金がほとんど相続できない
現状の法律で分割すると不動産が大半で現金がほとんど相続できない

<配偶者(長期)居住権の開始後>

旦那さまの相続時に、旦那さまが所有するご自宅に安心して住み続けるために、奥さまは配偶者(長期)居住権を得ます。

奥さまは配偶者(長期)居住権として1,000万円のご自宅に住む権利と、1,500万円の現金を相続することができます。

この場合、住む場所を確保した上に今後の生活費に充てられる現金も相続でき、安心できます。

図8:配偶者居住権を設定すると自宅と現金を相続できる
配偶者居住権を設定すると自宅と現金を相続できる

4-4.居住権の価値によっては相続税対策となる

配偶者(長期)居住権が設定されることによって、ご自宅の所有権は負担付となり、相続する際に「自由の利かない不動産」として評価額が下がります。

ご自宅は長男が所有していたとしても、配偶者(長期)居住権の権利分は奥さまが相続することになります。

相続税の対象となる場合には、奥さまは配偶者控除の特例が利用できますので、長男がご自宅を相続した場合に長男が2,000万円に対する相続税をすべて負担すると金額が大きくなりますが、配偶者(長期)居住権を利用することで長男の負担が軽くなります。

また、配偶者(長期)居住権は奥さまが亡くなられた時点で消滅しますので、実態としては配偶者(長期)居住権の評価分だけ長男は相続税が不要となりお得になります。

奥さまが亡くなられた際に、配偶者(長期)居住権に対して長男が相続税をあらためて課税されることはありません。

5.配偶者(長期)居住権の3つの注意点

配偶者(長期)居住権はメリットが多い制度ではありますが、次の3つの注意点には気を付ける必要があります。

5-1.共有名義のご自宅に対しては居住権を設定できない

旦那さまが亡くなられた際に、ご自宅が共有名義となっている場合には残念ながら配偶者居住権の設定はできません。

相続発生前に、旦那さまと長男との共有名義になっている場合や、旦那さまと旦那さまのお父さまとの共有名義になっている場合が該当します。

ただし、旦那さまと奥さまの共有名義の場合は配偶者居住権を設定できます。

5-2.相続開始前と同じ用途で建物を使用しなければならない

配偶者(長期)居住権を取得すると、家屋の全部を使用する権利を得ます。これは住居部分だけでなく、店舗や賃貸物件にしていた部分も引き継ぐことができます。

ただし、配偶者(長期)居住権は原則として相続が開始する前と同じ使用方法でなければなりません。よって、住居部分は住居として利用し、店舗部分がある場合には店舗を継続するまたは店舗を閉めて住居として利用する、賃貸部分は賃貸として利用または住居として利用する必要があります。別の用途に変更はできません。

また、賃料については、物件の所有者が賃貸人としての所有権を引き継ぐため、物件の所有者が受け取ります。

5-3.第三者に売却することはできない

配偶者(長期)居住権は配偶者だけが得られる権利です。そして、亡くなられた時点で消滅します。よって、配偶者(長期)居住権をお子さんや第三者に相続させることはできません。

奥さまが配偶者(長期)居住権を所有する場合には、亡くなられた時点で負担付所有権として所有していた長男の負担付の条件が外れ、完全な所有権を得ることになります。

6.配偶者(長期)居住権のある建物の増改築・修繕の費用負担

配偶者(長期)居住権を得てご自宅に住む場合、ご自宅をリフォームしたり、また、不慮の災害などで建物が損壊し、修繕が必要となってしまった際にかかる費用は、居住権を持つご自身と所有権を持つ所有者の方のどちらが負担するのか確認しておく必要があります。

6-1.増改築するときは所有者の承諾が必要

配偶者(長期)居住権を得てご自身がご自宅に住む場合には、所有者の方の承諾なしにご自宅を自由に改築したり増築をすることはできません。

リフォームをしたい場合には、あらかじめ所有者の方に相談し、許可をもらう必要があります。

また、ご自身が居住権を得ているご自宅に住まなくなった場合、第三者の方にご自宅を貸したり、もしくは家賃収入を得る場合などにも事前に所有者の方の承諾が必要となります。

図9:快適な家に変更したい場合は所有者に相談
快適な家に変更したい場合は所有者に相談

6-2.配偶者は固定資産税や必要な修繕費用を負担

居住権を得て住む場合には、固定資産税や普通の生活を維持するために必要となる修繕費用は負担しなければなりません。生活を維持するために必要な修繕とは、たとえば水道管が故障した場合などの修理費用のことをさします。

また、居住権を得たご自身がこの家から引っ越される場合には、通常使用した場合に劣化する経年劣化の範囲内であれば原状回復をしなくてよいことになっています。

6-3.所有者はリフォームや災害などによる修繕費用を負担

所有者の方が建物をバリアフリーにするなど建物自体の価値が上がるリフォームや、災害で損壊した建物を修繕するための費用などは所有者の方が負担することになっています。

万が一、ご自身が代わって費用負担をしてしまった場合には、所有者の方に請求することが可能です。

7.まとめ

旦那さまが亡くなられて相続が開始した際には、すでに奥さまが高齢となっていることが増えており、住み慣れた家を手放し新しい生活を始めることは、精神的にもかなり負担となりかねません。

そこで、旦那さまが所有していたご自宅に住み続けることができ、将来の生活資金を確保することもできるように配偶者居住権が新設されました。

配偶者居住権は「奥さまがご自宅に住む権利」のみで売却や譲渡ができないため、ご自宅を所有することよりも財産の評価が低くなります。

以前は、ご自宅を所有するか・しないかの2択しかありませんでしたが、居住権ができたことで新たな相続の方法が検討できるようになりました。

この制度は2020年4月以降に発生した相続で利用できる制度のため、始まってみないと分からない点もありますが、今後の相続において遺産分割がしやすくなることには変わりありません。

配偶者居住権を取得した際の相続財産の価値やその後の手続き等につきましては、相続を専門としている税理士にアドバイスを受けることをおススメします。

制度が開始されていないため、旦那さまがご健在の際には別の生前対策をされておくことも大切です。

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