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相続で配偶者居住権を利用するかしないかを決めるための確認ポイント

「夫が亡くなった後も住み慣れたこの家にずっと住み、その後の生活に困らない程度のお金が相続できればと思っているが、子どもたちが自分の相続権を主張すれば、このような願いは叶わないのでしょうか・・・」

ご自宅が相続財産の多くを占める場合、不動産を奥さまが相続してしまうと、お子さまたちの相続分は、預貯金などのその他財産ということになり、奥さまとしては、住むところはあっても、今後の生活資金に不安を感じる財産内容になってしまうかもしれません

相続財産の分け方について、十分に話し合いをして、奥さまとお子さまたちの折り合いがつけばよいのですが、お子さまたちがご自身たちの権利分はきちんと相続させてもらわないと困る!と考えているような場合は、話し合いがこじれてトラブルになり兼ねません。

このような相続では、今までは、泣く泣く住み慣れたご自宅を手放さなければならないことがありました。しかし、残される奥さまの生活が不安定になってしまう可能性があることから、平成30年の民法改正では配偶者居住権」という新しい制度ができ、奥さまの相続後の生活を守るための選択肢が増えました。

どのような制度なのか?本記事では、新しくできた「配偶者居住権」について、詳しくご説明いたします。

1.配偶者 居住権とはそのまま自宅に無償で住み続ける権利

配偶者居住権とは、ご主人さまが亡くなられた際、一緒に住んでいた奥さまであれば、所有権がなくても、そのご自宅に無償で住み続けることができるという権利です。今までは、権利的には、ご自宅の所有権を持つか持たないかという考え方で相続の話し合いを進めてきましたが、新たに「住む権利」という考え方が加わりました。

配偶者居住権という、不動産を所有する権利とは異なる「住む権利」が認められたことにより、奥さまはご自宅の所有権を持っていなくても、条件さえ整っていれば、住む権利を堂々と主張できるようになりました。

1:所有権と配偶者居住権の関係

2.配偶者居住権が成立する3つの条件

配偶者居住権の制度はすでに制定されていますが、実際に利用できるのは2020年4月1日以降に発生した相続からとなります。それ以前の相続では制度の利用はできません。

また、配偶者居住権が認められるための3つの条件をすべてクリアする必要があります。

条件1:内縁関係ではない、戸籍上の配偶者であること

 

条件2:亡くなられた方が所有していた建物に相続発生時に住んでいたこと

 

条件3:遺産分割、遺贈、死因贈与、家庭裁判所の審判などにより決まったこと

2:配偶者居住権が認められる条件

3.配偶者居住権の3つの特徴

配偶者居住権は、制度の趣旨を理解することで、奥さまとお子さまの双方にとって、メリットのある制度といえます。配偶者居住権の特徴は、この制度を利用するべきかどうかを検討する判断材料になりますので以下で詳しく確認してみましょう。

3-1.終身でも期間をきめてもどちらでもよい

配偶者居住権を設定する期間が、遺言書や遺産分割協議で決められた場合はその期間となりますが、定めがない場合には終身として、ずっとご自宅に住み続けることができます。所有権を相続したお子さまに、家賃などを支払う必要はありません。

配偶者居住権は、配偶者だけが得られる権利ですので、奥さまが万が一亡くなられてしまったら、その時点で配偶者居住権の権利は消滅することになります。配偶者居住権を他の方が引き継いで、相続することはできませんので、消滅後はお子さまの「完全なる所有権」とみなされることになります。

亡くなられたことで消滅した配偶者居住権に関しては、相続税や贈与税といった税金がお子さまにかかることはありません。

3-2.自宅以外の財産も相続しやすくなる

これまでは、奥さまがご自宅の所有権を相続してしまうと、相続財産の総額によっては、ご自宅以外の財産をまったく相続できない、もしくは、お子さまに代償金を、ご自身の貯蓄からお金を支払わなければならないといった状況に陥る場合がありました。

これからは、配偶者居住権を利用することで、たとえば、評価額が2,000万円のご自宅について、相続人同士で話し合って、配偶者居住権の価値を1,000万円、残りの1,000万円を配偶者居住権が設定された所有権の価値として、評価の割合を自由に決めてよいことになりました。(相続税評価をする場合は、正式な計算方法がありますので5章の2でご説明します。)

不動産の価値を分けて考えることで、配偶者居住権を設定した所有権の部分をお子さまに引き継いでもらえば、その分、奥さまはほかの相続財産を引き継ぐという選択ができます。まいのほかに、生活資金に対する不安を解消する相続ができますね事例で確認してみましょう。

【具体的な事例】

相続人:奥さま、長男、長女

相続財産:ご自宅(2,000万円の評価額)、預貯金(3,000万円の残高)

分割内容:法定相続分で分けることにする(奥さま2分の1、お子さま4分の1ずつ)

<配偶者居住権の制度の開始前>

亡くなられたご主人さまが所有していたご自宅に安心して住み続けるためには、奥さまがご自宅の所有権を相続する必要がありました。そうすると、奥さまは2,000万円のご自宅と預貯金は500万円しか、相続することができません。この場合、住むところは確保できますが、老後の生活資金には不安が残ります。

3:制度開始前の相続の考え方

<配偶者居住権制度の開始後>

奥さまは、ご主人さまが所有されていた不動産の配偶者居住権を得ることにします。配偶者居住権の評価額を1,000万円とすれば、預貯金を1,500万円まで相続することができます。不動産の所有権を相続するのではなく、配偶者居住権を相続すれば、住む場所を確保した上に、今後の生活費に充てる十分な現金を相続できるので安心です。

4:配偶者居住権を設定すると自宅と現金を相続できる

3-3.相続税の節税効果が期待できる

配偶者居住権が設定されると、所有権には負担が付いているとみなされ、たとえ相続しても「自由の利かない不動産」となり、評価額を下げることができるといった考え方は相続税評価をする上で認めています。

さらに奥さまが相続する配偶者居住権の部分には、土地の評価額を下げることができる小規模宅地等の特例を適用することができます。また、配偶者の税額軽減控除も使えるため、ほとんどの場合において、奥さまに相続税がかかることはないでしょう。小規模宅地等の特例効果で、全体の相続税評価額が下がるので、お子さまたちにとっても節税メリットが生じます。

配偶者居住権は、亡くなられてしまうと完全に消滅する権利のため、奥さまが亡くなられた際に、配偶者居住権に対する相続税や、贈与税といった税金が課税されることはありません。配偶者居住権の特徴を活かせば、設定することで相続税評価額を下げて節税できるメリットと消滅後に税金は生じないため、相続税対策としては2つの効果が期待できます。

しかし、所有権を取得するお子さま自身に小規模宅地等の特例が適用できる場合には、一概に配偶者居住権を設定すると節税効果が高いとはいえませんので、税金のシミュレーションをしてから判断されることをお勧めいたします。

4.配偶者居住権を利用するときの3つの注意点

配偶者居住権を利用する際の注意点を3つ、ご説明いたします。

4-1.以前から住んでいた配偶者のみ利用できる

配偶者居住権は、相続が発生した時点で、そのご自宅に住んでいた配偶者の方のみ、利用できる制度です。別居していた場合には利用できません。また、ご自宅の名義がご主人さまや夫婦の共同名義の場合は利用できますが、それ以外の方の名義だった場合には利用できません。

4-2.終身の場合は原則登記が必要

終身とする配偶者居住権の権利を対外的に証明するには、所有権登記と同じように「居住権登記」をすることが必要です。不動産の登記簿謄本に「配偶者の居住権」欄が新設されて、そちらに記載されることになります。

登記する対象は家屋だけであり、土地に設定することはできませんが、家屋に配偶者居住権が登記されていれば、いくらその土地の所有者であっても、勝手に家屋を処分することはできなくなります。

また、配偶者居住権が設定された家屋を含む不動産の所有権は「負担付所有権」とみなされます。たとえば、奥さまが配偶者居住権を得て、長男が土地、家屋ともに所有権を相続した場合には、長男は配偶者居住権が設定されている間は、奥さまの同意なしに、自由に売却することはできないということです。

5:終身の配偶者居住権は登記する6:配偶者居住権の登記内容

4-3.権利を譲る又は売ることはできない

配偶者居住権は、譲渡することは禁止されています。配偶者居住権は、配偶者の方だけに帰属する権利とみなされるため、第三者への譲渡はできません。

また、貸すことについては、所有者の承諾は必要ですが、配偶者居住権が設定されていても、第三者に賃貸することは可能です。その賃料については、配偶者の方に帰属することになります。

いずれにせよ、配偶者居住権を設定した場合には、居住権者と所有権者の互いの同意なくして、勝手な判断をすることはできません。

5.配偶者居住権の評価の考え方

配偶者居住権の評価については、2つの考え方があります。相続税などは関係なく、相続人同士で話し合いをして、配偶者居住権の価値を決める方法と、相続税の申告をおこなうために、税法で決められた算式を用いて配偶者居住権を評価する方法です。

5-1.相続人同士で話し合って決める

相続人同士が財産をどのように分けるかを話しあう遺産分割協議の際に、不動産全体の評価額に対して、配偶者居住権と所有権の評価配分について話し合い、相続人同士が納得できる額であれば、配偶者居住権の評価額を自由に決めてもよいと民法上は定めています。

5-2.相続税申告用に評価する方法

相続税を納めるために、不動産の相続税評価をおこなう場合、配偶者居住権の評価額は自由に決めることはできず、正確に計算する算式が、土地と建物各々で決められています。算式自体は、複雑そうに見えますが、不動産の相続税評価額が分かれば、あとは算式に当てはめる数値を調べて計算するだけです。

※配偶者居住権の評価について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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6.まとめ

ご主人 さまが亡くなられて相続が発生した際には、すでに奥さまがご高齢となっていることが多く、住み慣れた家を手放し、新しい生活を始めることは、精神的にもかなり負担となりかねません。そこで、ご主人さまが所有していたご自宅に住み続けることができ、将来の生活資金を確保することもできるように、配偶者居住権が新設されました。

配偶者居住権は「奥さまがご自宅に住む権利」のみで、売却や譲渡ができないため、ご自宅を所有することよりも財産の価値を低くみなすことができます。

以前は、ご自宅を所有するか、しないかの2択しかありませんでしたが、配偶者居住権ができたことで、新たな相続の方法が検討できるようになりました。この制度は20204月以降に発生した相続で利用できます。

配偶者居住権を取得した際の相続財産の価値やその後の手続きなどについては、相続を専門としている税理士にアドバイスを受けることをおススメいたします。

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