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遺言書は開封しても大丈夫!?遺言を見つけたときの対応のすべて

亡くなられた方の遺産整理をしていたら、思いがけない場所から遺言書が出てくることがありますが、「遺言書を勝手に開封してはいけない」という法律があるのをご存知でしょうか?
一生のうちで遺言書に遭遇することが無い方が大半ですので、知らない方も多いでしょう。

もし遺言書を見つけたら、きっと法律を知らずに慌てて遺言書を開封してしまうことでしょう。そして、それを他の相続人に伝えたところ「検認を受けずに遺言書を開封したんだから、お前には財産を受けとる権利はない」なんて言われたらどうしましょうか?
 
「検認?何のこと?なんで財産がもらえないの?」どんどん不安な気持ちになっていきますね。遺言書を勝手に開封すると罰則がありますが、一般的に誤解されていることも多いので、ここでは遺言書を見つけたときの手続きからトラブル回避の方法まで詳しく説明していきます。

1. 遺言書を見つけたら、絶対に開けないでください

あなたが、もし遺言書を見つけたときは、その遺言書は勝手に開封しないでください。遺言書を見つけたら、すべての相続人に知らせて家庭裁判所で開封してもらいましょう。

1-1.遺言書を勝手に開封するのは法律違反です

遺言書は、「家庭裁判所において相続人の立会いの下で開封しなければならない」と法律で定められています。これは、亡くなった方の遺言書を生前から預かって保管していた場合でも同じです。もし、これに違反(開封)した場合には、5万円以下の過料(罰金)が課せられることもあるのでご注意ください。

図1:遺言書は勝手に開封してはいけません

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1-2.遺言書を見つけたら家庭裁判所で開封しましょう

遺言書を家庭裁判所で開封することを「検認」といいます。
検認が必要とされている理由は、遺言書自体が本物かどうか、誰かの都合のいいように勝手に書き換えられていないか、を確かめなければならないからです。遺言書が勝手に書き換えられたり、まったく別の
ものとすり返られたりしたら、亡くなった方の意思を実現できなくなってしまいます。意思を実現できなければ、何のために遺言書を書いたのかわからなくなってしまいますよね。

図2:遺言書は相続人全員で家庭裁判所で開封

1-2-1.遺言書の開封には公平性が必要

遺言書の開封には客観性や公正性が求められるため、その開封は家庭裁判所で相続人全員の立会いの中で行われるもの、と法律で定められています。立ち会いに関しては、裁判所に申立をすると家庭裁判所から全員に通知されますが、実際には遠方に住んでいる方など参加できない場合もあり、参加の有無は個人にゆだねられています。

1-2-2.裁判所のホームページに記載の「検認の制度」を確認しよう

裁判所のホームページを見ると、検認の制度について次のように書かれています。

「遺言書の保管者またはこれを発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して、その「検認」を申立しなければなりません。また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。検認とは、相続人に対し遺言の存在およびその内容を知らせるとともに、遺言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続きです。遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。」

1-3.遺言書は3種類!遺言書によって検認の要否が変わる

遺言書には3つの種類があるのをご存知でしょうか。
公正証書遺言は検認が不要、自筆証書遺言と秘密証書遺言は検認が必要です。

1-3-1.(検認が必要)自筆証書遺言

亡くなった方ご自身が全文を書いた遺言書で、ご本人が保管していた遺言書です。自筆証書遺言には基本的なルールがありますが、なかなかルールどおりに作成できていないケースも多く有効性を含めて検認が必要となります。「検認前に開封厳禁」というものの、そもそも封筒に入っていないケースや、封筒に封がしていないケース、封筒に何も書かれておらず中身が分からないケースなど様々なケースがあります。
また、遺言の内容が法的に正しいかどうかはチェックされていないため、検認後に文面が正しい形式で書かれているかなどチェックも必要となります。

図4:自筆証書遺言の封筒のイメージ ※基本ルールどおりに実施していた場合

1-3-2.(検認が必要)秘密証書遺言

亡くなった方がご自身で作成した遺言書を公証人が存在のみを証明し、原本を本人が保管する遺言書です。亡くなった方の最寄りの公証人役場で確認すると、秘密証書遺言を作成したかどうかの確認ができます。ただ、原本はご本人が保管しているため見つからない場合は執行されません。この遺言を利用されるケースは稀ですが、封筒の裏面に公証人、証人の名前と捺印があれば秘密証書遺言となります。

1-3-3.(検認が不要)公正証書遺言

公証人(専門家)立会いの下で作成され、原本を公証人が保管し正本を亡くなったご本人が保管する遺言書です。亡くなった方の最寄りの公証人役場で作成の有無を確認可能です。封筒に「公正証書」とあるため分かりやすく、封筒に封がされていないことも多いです。こちらは先に説明した「検認」が不要です。公正証書遺言は、公証人の指導のもとで作成しているため間違いも無く、そのまま執行できます。

図3:公正証書遺言のイメージ

2.遺言書を開封しても一般的に罰金はなく、効力は失われません

遺言書を知らずに開封したり、最初から封がされていなかったものを発見して開封したと疑われたり、「開封禁止」があだになることもありますが、実態はどうでしょうか。

2-1.開封に対する罰金は稀です

結論からいうと遺言書を開封してしまっても過料(罰金)を課されるケースは滅多にありません。遺言書を家庭裁判所で開封する検認手続き自体が広く世間一般に認知されていないこともあり、知らずに開封してしまうケースも多いため、開封したこと自体をもって過料(罰金)が課されたということはあまり耳にしないというのが実情です。ただし、法律上は5万円以下の過料の定めがあるので注意しましょう。

2-2.開封してしまった遺言書でも遺言の効力は失われません

たとえ、誤って遺言書を開封してしまったとしても、遺言書自体の効力や相続人の資格も失われることはありません。ただし、故意に遺言書を隠したり、破棄したり、改ざんしたり、差し替えたりした場合は、相続人としての権利を失うことになりますのでご注意ください。あくまでも、遺言書は亡くなった方の想いを実現するためのものですから、相続人が亡くなった方の意に反して勝手に財産を処分することには厳しい制限が課されます。

3.検認に関する3つの疑問

検認手続きについて「そもそも封のない遺言書の取り扱い」「相続人全員が集まらないと検認手続きができないのか」といった質問がありますので、こちらに回答します。

3-1.封のない遺言書でも検認は必要

自筆証書遺言には、封をしていないものや、そもそも封筒に入れていないもの、メモの状態で残っているものが見つかる場合があります。その場合であっても亡くなった方のご本人が作成したものだと証明するためにも、家庭裁判所で検認の手続きをしなければなりません。

3-2.複数の遺言書が見つかった場合は重複部分のみ最新の日付が有効

複数の遺言書が見つかるケースもあります。その場合には、重複している財産のみ最新の内容が適用されますが、重複していない財産については日付の古いものも有効です。遺言書に書かれている日付や封筒に書かれている日付をもとに一番新しいものを判断します。検認の際にはすべての遺言書を提出しましょう。ただし、自筆証書遺言では内容が無効な場合も多いことから検認で無効になったり、その後の内容判断の際に無効になる場合があります。

3-3.検認に相続人が立会うかどうかは本人次第

遺言書を見つけて家庭裁判所に検認の申立を行うと、家庭裁判所から検認を行う日のお知らせが申立人のところに届きます。基本的には、申立人以外の相続人も全員家庭裁判所に集まってもらって、裁判官が遺言書を開封するのを確認することになりますが、検認の立会いに出席するかどうかは各相続人の判断に任されています。高齢者やその日にどうしても外せない用事がある方などがいて全員出席出来なかったとしても検認の手続きは行われます。その場合は、欠席した方に、後日家庭裁判所から検認手続きが完了した旨の通知が送られてきます。注意点としては、申し立てをした方は必ず出席が必要です。

4.ご自身で検認の手続きを終える手順

遺言書を見つけたら家庭裁判所に行って検認の手続きをします。それと同時に相続人全員に遺言書があったことを知らせましょう。一般的にあまり知られていない検認の手続きについて、実際の検認手続きについてご説明します。

4-1.検認の申立を家庭裁判所におこなうまでの流れ

①検認の申立をする人を確定します
 遺言書を預かっている方、または遺言書を発見した相続人がおこないます

②検認の申立をする家庭裁判所を確認します
 遺言者(故人)の最後の住所地の家庭裁判所に申立をします

③検認に必要な費用を確認する
 800円+αです。遺言書1通につき収入印紙代800円が必要です。
 家庭裁判所から連絡用の郵便切手代は、各家庭裁判所でご確認ください。

④検認に必要となる書類を準備します
 ・申立書(家庭裁判所にある)
 ・遺言者の戸籍謄本(出生時から死亡時までのすべての戸籍)
 ・相続人全員の戸籍謄本
 ・遺言者の子(及びその代襲者)が死亡している場合は、その子(及びその代襲者)の戸籍謄本
 ・その他裁判所が必要と認める場合には追加書類の提出が求められる場合があります。

⑤申立書を作成します
 太枠の中に必要事項を記載します
 申立書の記入例はこちら ⇒ 「裁判所HP:遺言書の検認の申立書の記入例」

⑥家庭裁判所へ検認の申立手続きに行きます

4-3.家庭裁判所で申立書が受理されたあとの検認の流れ

家庭裁判所から検認を行う日の通知が届く
    ↓
指定された期日に家庭裁判所に出頭して遺言書の検認を受ける
 ※検認を受ける遺言書、印鑑、その他指定物を持参
    ↓
家庭裁判所で裁判官に持参した遺言書を提出
    ↓
裁判官は出席した相続人の立会いのもとで遺言書を開封
    ↓
遺言書の状態や筆跡、内容などを確認
    ↓
遺言の内容を執行するために「検認済証明書」の発行を申請
 ※申請には遺言書1通につき150円の収入印紙と申立人の印鑑が必要

注意点としては、検認をしたからといって遺言書の内容自体を家庭裁判所が認めるわけではありません。検認とは、あくまでも「たしかにみんなの前で開封しました」というのを家庭裁判所が文書に残すに過ぎません。よって、遺言書の内容自体に納得いかない場合は、別で訴訟などを起こすことになります。

5.ご自身が遺言書を書く場合、開封されないための対策

これからご自身の遺言書を作成しよういう方は、ご自身が亡くなった後に家族がスムーズに相続を進められるように遺言書を作成しておくことをオススメします。最もオススメな遺言は、公証人に立ち会ってもらって遺言書を作成する公正証書遺言書で、検認の手続き自体必要なくなるので安心です。

一方で、公正証書はお金がかかることから自筆証書で作成する場合には、今回のケース同様に「開封」についてご家族が不安にならないための対策を2つ紹介します。
(1)遺言書を収めた封筒に「家庭裁判所で開封してください」などのコメントを記載
(2)遺言書を二重に封入れして外側の封筒を開封したときに検認の手続きについて簡単に書いた用紙を入れておく

こうすれば検認を知らない人が誤って本物の遺言書を開封してしまうことを防げます。

6.まとめ

亡くなられた方の葬儀が終わり、ようやく一息ついた頃に遺品を整理していると、再び悲しみが訪れてくるものです。そのような平常時とは異なる心情の中で突然遺品の中から「遺言書」と書かれた封筒を見つけたとしたらさらに動揺するものです。

目の前の「遺言書」と書かれた封筒を何の気なしに開封してしまう人も多いと思いますが、この記事を読んだ方でしたら、もう遺言書を勝手に開封するなんてことはありませんね。

遺言書を勝手に開封するだけでしたら過料(罰金)で済むこともありますが、勝手に開封して遺言書の内容を改ざんしたり、破棄したりすれば、相続人の地位さえ失うことにもなります。遺言書にかかれた亡くなった方の想いを尊重することを法律が認めていますので、その想いに沿って遺言書の内容を実現してあげることが遺された者たちの努めではないでしょうか。

最後に、万が一、知らずに遺言書を開封してしまっても、あわてずに家庭裁判所で検認の手続きをしましょう。

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