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住宅ローンの資金援助には贈与税がかかる!ポイントを押さえて回避する方法と注意点

一人で住宅ローンを組むのは大変ですよね。
そんな時、奥さんやご両親が住宅購入の資金援助を申し出てくれたらこんなに嬉しいことはありません。
ただし、こうした資金援助に喜んでいると思わぬ落とし穴がありますのでご注意ください。
実は、資金援助には贈与税の問題が絡んでくるのです。

ここでは住宅ローンにまつわる夫婦間・親子間(祖父母⇒孫含む)の資金援助や住宅ローン借換えの場合に起きる贈与税の問題について記載します。
贈与税はポイントを抑えることで上手に回避することができますので、住宅ローンにまつわる贈与税に不安を抱いている方、節税したい方、ぜひご参考ください。

1.住宅ローンの資金を援助したら贈与税が発生する

住宅ローンを考える時には夫婦の助け合いによる返済、ご両親から資金援助受けるなど、ご自身の稼ぎだけではなく援助を考えることも珍しくありません。
ご家族であっても個人の財産の返済について借入ではなく資金援助となる場合には、贈与となるため贈与税が関係してきます。

1-1.個人の財産(住宅)に対する返済は贈与になる

生活費・教育費など「日常生活に必要な生活費」には贈与税がかからないものですが、住宅を購入する際には、住宅の持ち分が個人の財産となります。
たとえば、旦那さまの名義で購入すれば100%旦那さまの財産となります。旦那さまと奥さまが50%ずつの持ち分となればお二人がそれぞれ50%ずつの財産を所有していることになります。
よって、旦那さまの財産に対する返済をご両親が援助されれば贈与となります。
また夫婦で50%ずつの場合に奥さまの返済を旦那さまが援助すれば、こちらも贈与となります。

1-2.住宅ローンの資金援助で贈与税が発生する

では、住宅ローンにまつわる贈与税は、どのような場合に発生するのでしょうか?代表的なものは次のようなケースです。
住宅ローンを組む際に、単独の名義にしたうえで、ご家族などに頭金の一部を負担してもらったり、ローンの支払いを肩代わりにしてもらった場合、その金額が贈与となります。

では、贈与が発生した場合、どの程度の贈与税がかかるのかを確認しましょう。

1-3.住宅ローンの援助に贈与税がかかる場合の贈与税額の計算例

1-2の例を基に贈与税を計算していきます。

【計算例①】
奥さまから旦那さまへの贈与額が600万円であった場合、贈与税の金額は次の通りです。
(頭金として600万円を奥さまからもらった場合など)

(600万円-110万円)×30%-65万円=82万円

特別税率表は直系尊属(祖父母や父母など)から、その年の1月1日において18歳以上の者(子・孫など)への贈与の場合に使用します(令和4年3月31日以前の贈与については「20歳」)

【計算例②】
ご両親からご自身への贈与額が600万円であった場合、贈与税の金額は次の通りです。
(住宅ローンの一部負担として600万円をご両親からもらった場合など)

(600万円-110万円)×20%-30万円=68万円

贈与税の一般的な計算式は、以下のとおりです。この計算式に当てはめて贈与税を計算していきます。

図1:贈与税の計算式
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一般的な贈与税の計算では、贈与を受ける側が年間110万円(1月1日から12月31日)までの受け取りであれば非課税のためゼロ円となります。
110万円を超えた場合にはその超えた分の金額についてのみ計算を行ないます。110万円を超えた部分の計算では、上記の計算式(図1)と贈与税の速算表(表1)で計算された贈与税を納税することになります。

表1:贈与税の税率表  ※特例税率は贈与をうける人(子・孫)が18歳以上のとき
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2.夫婦間で住宅ローンの贈与だと言われないための回避法

ご夫婦の間で住宅ローンにまつわる贈与税を指摘されるケースは、主に3つあります。
・旦那さまの100%所有の財産に対して奥さまが一部負担するケース
・夫婦でローンを組んだが奥さまが子育てに専念することになり借り換えをするケース
・離婚して財産分与に伴って名義変更をするケース

しかし、奥さまが支払った住宅購入の頭金が「贈与だ」と言われないための回避方法があります。

2-1.奥さまが購入資金の一部を負担するケースの回避法

2-1-1.奥さまが頭金を負担する場合:頭金相当を奥様の持ち分として不動産登記する!

【贈与税が発生するケース】
住宅を購入したとき、住宅ローンも不動産登記もご自身単独名義だけれども、実は奥様も頭金の一部を負担しているというケースがよくあります。このままの状態ですと、奥様からご自身へ贈与があったものとして、奥さまが負担した頭金から基礎控除額110万円を控除した残額についてご自身に贈与税が課せられてしまいます。

【贈与税の回避方法】
住宅には所有権があります。
奥さまが負担した頭金相当分については、奥様の持ち分となるように不動産登記をすることで贈与税を回避することができます。
これは、共働き夫婦が住宅ローンを夫婦それぞれの名義で2本組む場合(ペアローン)も同様で、各自の住宅ローン負担割合に応じて不動産の持ち分をそれぞれ設定することで贈与税の回避が可能となります。

このように贈与税の問題を避けるためには、実際の購入資金の負担割合と不動産登記の持ち分割合を同じにする必要があります。

2-1-2.住宅ローンが連帯債務の場合:夫婦の所得割合等で不動産の持ち分を定める!

(1)まずは住宅ローンの連帯債務と連帯保証の違いを確認しよう

連帯債務の場合にはローンに対し奥さまとご自身がそれぞれ独立した契約者となり直接的にローンの弁済責任を負うことになります。一方で、連帯保証となり奥さまがご自身の保証人となる場合にはローン契約の当事者はご自身だけとなり、奥さまは間接的なローンの弁済責任を負うことになります。

この場合、連帯債務者であっても連帯保証人であっても、どちらも最終的には弁済責任を負うことになりますが、贈与税の問題を考える際には、ローン契約の当事者が誰になるのかだけを考えるため、持ち分登記の取り扱いが変わってきます。

また、ローンが連帯債務の場合には、そのローン負担割合は所得金額等に応じて合理的に定める必要があり、それに連動して不動産の持ち分割合も決まります。よって、例えばご自身が奥さまに変わって負担する借入金がある場合には、旦那さまから奥さまに対する贈与となってしまいますので注意しましょう。

【例】
5,000万円のマンションを夫婦2分の1ずつ共有の持ち分とする
夫婦2人の連帯債務のローン 5,000万円
これを夫婦の間で夫と妻とで6:4の割合で負担すると取り決めた場合
  
(実際の負担額)
夫の負担借入金 5,000万円×60%=3,000万円
妻の負担借入金 5,000万円×40%=2,000万円
  
(本来負担すべき金額) ※持ち分が2分の1のため
夫の負担借入金 5,000万円×50%=2,500万円
妻の負担借入金 5,000万円×50%=2,500万円

(夫から妻への贈与金額)
3,000万円-2,500万円=500万円

一方、連帯保証の場合には保証人はローン契約の当事者ではないため、持ち分はゼロとなります。

(2)連帯債務ローンなのにご自身の単独名義で住宅を購入した場合の落とし穴

【贈与税が発生するケース】
贈与税の問題を全く考えず、連帯債務で夫婦それぞれが住宅ローンを組んだけれどもマンションは旦那さまの単独所有とした場合にはご注意ください。

この場合には、ローン返済おこなう年ごとに奥様の返済負担分について、奥さまから旦那さまの贈与があったものとされてしまいます。
このとき、もし奥さまの返済額が定かでなかった場合には(夫婦共通の口座から返済を行いそれぞれの明確な負担額が算定できない場合など)、その年のローン返済額に夫婦の合計所得にしめる奥さまの所得割合を乗じた金額をその年の奥さまからご自身への贈与額とします。

【贈与税の回避方法】
このような状態となってしまった後に贈与税を回避する策としては、売買形式の形をとって、ご自身から奥様へマンションの持ち分を移転する必要が出てきます。

しかし、このやり方をすると毎年不動産登記が必要となり、登録免許税、不動産取得税、司法書士手数料等がかかり不経済となります。連帯債務でローンを組む場合には初期の時点で所得金額や実際の返済額に応じた持ち分をそれぞれ登記するのが良いでしょう。

2-2.奥さまが子育てに専念?!ペア住宅ローン借換え時の回避法

2-2-1.ペア住宅ローンを夫単独名義のローンに借換える場合の落とし穴

共働き夫婦は、住宅ローンを組んだ当初、住宅ローン控除を最大限に活用しようとそれぞれの名義でローンを組み、不動産登記もローン負担分に応じて行うことが多いのではないでしょうか。しかし、ローンの返済途中で奥様が家事や育児に専念することになると、住宅ローン返済を全額ご自身の負担にするために、ご自身の単独名義のローンに借換えを行うケースがあります。
このとき、不動産登記を変更せず、住宅ローンをご自身の単独名義のものに借り換えた場合には、ご自身が奥様の住宅ローンを肩代わりしたことになってしまうため、肩代わりした住宅ローンの残債分がご自身から奥さまへの贈与となってしまいます。このような場合の贈与税を回避するには、負担付贈与という手段が有効です。

2-2-2.負担付贈与とは?

ローン借換えと同時に妻の住宅ローン残債相当の不動産持ち分を夫へ移転登記することで贈与税を回避することができます。これを負担付贈与といい、妻の不動産持ち分を住宅ローン残債という負担付で夫へ贈与したことになります。

このとき、贈与税の課税対象は【持ち分移転する不動産の時価(=不動産時価×妻の持ち分比率)】から【住宅ローン残債】を控除した額となりますので、【持ち分移転した不動産の時価】=【住宅ローン残債】であれば贈与税はかかりません。
【持ち分移転する不動産の時価】>【住宅ローン残債】の場合には、その差益に対して夫に贈与税がかかりますので注意が必要です。

【持ち分移転した不動産の時価】=【住宅ローン残債】  ・・・ 贈与税は非課税
【持ち分移転した不動産の時価】>【住宅ローン残債】  ・・・ 夫に贈与税
(但し、差額が110万円までは非課税)
【持ち分移転した不動産の時価】<【住宅ローン残債】  ・・・ 贈与税は非課税

一方、妻については【持ち分移転する不動産の簿価】<【住宅ローン残債】の場合にはその差益に対して譲渡所得とみなされ所得税がかかります。

【持ち分移転した不動産の簿価】<【住宅ローン残債】  ・・・ 妻の譲渡所得

但し、住宅ローン借換え時の銀行審査においても、通常はローン額に応じた担保が求められますから、住宅ローンの負担額に応じた持ち分の不動産登記は必然とも言えるでしょう。

【例】
5000万円のマンションを夫婦それぞれ2500万円のペアローンを組んで購入し、それぞれ500万円ずつ返済した時点で夫単独名義のローンに借り換える場合には次のようになります。


【当初ローン残高】夫2500万円、妻2500万円 
【当初不動産持ち分】夫50%、妻50% 


【500万円返済後ローン残高】夫2000万円、妻2000万円
【500万円返済後不動産持ち分】夫50%、妻50%


【妻のローン残債2000万円の負担付で残債相当持ち分を譲渡】
【負担付贈与後の不動産持ち分】夫90%、妻10%   

100%×2000万円(負担付贈与の対象となるの妻の残債)/5000万円(当初ローン残高)=40%
∴40%分(2000万円相当=5000万円×40%)の移転登記を行う必要あり。
夫持ち分 50%+40%=90%
妻持ち分 50%-40%=10%

図2
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2-3.離婚に伴う住宅ローン名義変更については贈与税はかからない

離婚協議により住宅ローンはご自身が払い続けるが、不動産の所有権はすべて奥さまのものとなるケースを想定しましょう。このとき、奥さまは不動産を無償で入手するわけですが、通常このケースでは贈与税はかかりません
これは贈与ではなく、離婚に伴う財産分与と考えられるからです。

ただし、分与された財産の額が社会通念上多すぎると認められる場合や、贈与税を回避する目的で離婚したと認められるケースでは贈与税が課せられることになりますのでご注意ください。

3.ご両親に住宅ローンを肩代わりしてもらう場合の贈与税の考え方

ご両親に住宅ローンを肩代わりしてもらう場合の注意点住宅ローンの返済の途中で、ご両親に住宅ローンを肩代わりしてもらうケースを想定してみましょう。
このとき、ご両親の返済資金で住宅ローンを返済したにもかかわらず、不動産登記について何もしないでいると、やはり贈与税が発生してしまいます。贈与税を回避するためには、ご両親が負担した資金相当の持ち分について、所有権がご自身からご両親へ移転したものとして不動産登記をする必要があります。

3-1.住宅ローンの肩代わりには住宅取得等資金の非課税の特例が使えない!

住宅ローンの返済中にご両親に住宅ローンの返済を肩代わりしてもらうことになった場合、住宅取得等資金の贈与税の非課税の特例は使えません
この特例は、贈与が行われた年の翌年3月15日までに居住を開始することという要件があり、すでに住んでいる状態では、この特例の要件に合致しないためです。

※住宅取得等資金の贈与税の非課税枠については、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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3-2.暦年贈与を活用した110万円以内の贈与や相続時精算課税は使える!

それでは、暦年贈与を活用して贈与税の基礎控除である110万円の枠内で毎年住宅ローンを親に返済してもらうケースはどうでしょうか。
この110万円以内の贈与については、利用する用途を問われないため贈与されたお金を住宅ローンに充てることには問題はありません。ただし、暦年贈与の注意点である毎年計画的に110万円以下の資金援助を受ける場合には、定期贈与と疑われないように注意しましょう。定期贈与とは、毎年同時期に同額の資金援助があると、その資金援助開始の時点においてまとまった資金の贈与の意思があったものとみなされ、その総額について一時に贈与税が課される可能性があります。

この定期贈与認定を回避するには、毎年、基礎控除を少し上回る額の贈与を行い、その都度贈与税申告書を提出するのがおすすめです。毎年申告することにより、まとまった資金の贈与ではなく、必要な都度、毎年110万円の贈与を行っているということを税務署に対して示すことができます。

また、ご両親に住宅ローン残債を肩代わりしてもらうケースにおいて相続時精算課税を利用することも可能です
。ただし、いったん相続時精算課税を選択すると暦年課税へは戻れないことや、相続時精算課税は相続税の繰延べであって非課税ではないことに注意して選択を検討してください。

※暦年贈与について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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※相続時精算課税について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)
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3-3.ローン返済能力がないお子さんには贈与税はかからない

お子さんが借金を多額に抱えて明らかにローン返済が不可能な状態にある場合には、ご両親がローンを肩代わりしても贈与税は課されないことになっています。
このようなお子さんの状態を、“資力喪失”といい、例えば自己破産も一例です。この“資力喪失”の判定は非常に難しいので専門家に相談することをおすすめします。

4.まとめ

今回は住宅ローンにまつわる贈与税の諸問題について書きましたがご参考になりましたでしょうか?

重要なことは、夫婦間であっても、親子間であっても、住宅購入資金負担分に応じた不動産登記が行われているかどうかです。仮に、誤った持ち分で不動産登記をしてしまった場合には、贈与税の申告期限である翌年3月15日までに錯誤登記を行うようにしましょう。錯誤登記を行い、贈与の意思がなかったことが確認できれば贈与税は課されません。

ただし、不動産登記には登録免許税や手数料その他不動産取得税がかかりますので、贈与税の負担と比べてどちらを選択すべきか検討してください。

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