相続税における延滞税が発生する3つのパターンとは?追加で課される加算税も解説

  • 相続税

「相続税の納税期限を過ぎてしまったらどうなるの?」
「延滞税がかかると聞いたけれど、いくらかしら?」
「税務調査で相続税の納付額が少ない、と指摘されてしまった…。」

相続税の申告と納税には、亡くなられたことを知った日の翌日から10ヶ月以内という期限があります。
期限を超過した場合、法定納期限の翌日から完納する日までの延滞税を支払わなければいけません。
また、税務調査で申告が間違っていると分かった際にも「延滞税」が発生します。

本記事では、相続税の延滞税が発生する3つのパターンと延滞税の計算方法を詳しくご説明いたします。「延滞税」が発生しないようにすることが一番ですが、発生した場合に考えるべき内容を知り、適切な対応をしましょう。

1.延滞税は法定納期限を超過した時に発生する

相続税の申告書の提出と納付は決められた期限までにおこなわなければなりません。申告・納税の期限までに税金を完納しなければ、ペナルティとして延滞税が発生します。

納付が遅れた理由により延滞税が課されるパターンは3つあります。

図1:延滞税がかかる3つのパターン
SO0010_1

(1) 法定納期限(相続税申告期限)までに税金を納めていない場合
(2) 期限後申告または修正申告書を提出した場合
(3) 税務調査で指摘を受けて、税金の支払いが必要になった場合

次の章で詳しくご紹介します。

※税務調査について詳しくは、次の記事を参考にしてください。

2.相続税の延滞税が発生する3つのパターン

相続税を期限までに納付しない場合には、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じた延滞税を納付しなければなりません。
相続税の延滞税が発生する3つのパターンをご紹介します。

2-1.法定納期限までに税金を納めていない場合

相続税は申告書に基づき、原則として現金一括で納付しなければなりません

不動産や株など現金以外の相続をすると、相続税として納める現金を自分で準備しなければなりません。相続税申告書の提出をしても期限内に納付できない場合は、法定納期限から完納まで遅れた日数分の延滞税が発生します。

2-2.期限後申告または修正申告書を提出した場合

相続税申告期限までに申告と納税が間に合わず期限後申告した場合、あるいは修正申告をした場合は、申告書を提出した日が納期限になります

修正申告は計算間違いや財産の評価の誤りにより、少なく申告してしまった場合に行います。
修正申告をすると納税が遅れた分に限り、その遅れた日数分だけ延滞税が発生します。

この場合追加される可能性のある加算税(5章参照)
・「過少申告加算税」
・「無申告加算税」

※修正申告について詳しくは、こちらを参考にしてください。

2-3.税務調査で指摘を受けて、追加で税金の支払いが必要な場合

相続税の申告をおこなうと、おおむね6ヶ月~2年後に税務調査を受ける可能性があります。相続税の税務調査により、申告された相続税が少ない場合または申告がされていない(無申告)場合は、指摘された相続税額に対して納付期限から追加納付するまでの遅れた日数分だけ延滞税が発生します。

税務署が更正通知書を発した日から1月後の日が納期限になります。

この場合追加される可能性のある加算税(5章参照)
・「過少申告加算税」
・「無申告加算税」
・「重加算税」

3.相続税における延滞税の計算方法

延滞税は、納期限から経過した日数に応じて税率が2段階に分けられます納期限から2ヶ月以内であれば、低い税率での納税となります。一方、2ヶ月を超えると高い税率になります。

図2:延滞税の税率は2段階
SO0010_2

3-1.相続税の延滞税の税率

延滞税の税率は納期限の翌日から2ヶ月以内と超過後で異なります。

<納期限から2ヶ月以内の場合>
原則として年「7.3%」と「延滞税特例基準割合+1%」のいずれか低い割合を適用します。下表Aの割合が適用されます。
<納期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降の場合>
原則として年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合を適用します。下表Bの割合が適用されます。
表1:相続税の延滞税の税率

期間

割合

A

B

令和3年1月1日~令和3年12月31日 

2.5%

8.8%

令和4年1月1日~令和4年12月31日

2.4%

8.7%

令和5年1月1日~令和5年12月31日

2.4%

8.7%

令和6年1月1日~令和6年12月31日

2.4%

8.7%

図3:令和6年1月1日から令和6年12月31日までの期間の税率

相続税 延滞税

3-2.延滞税の計算式

延滞税は計算式により求めることができます。法定納期限の翌日から完納するまでの日数に応じて計算します。

①(納付すべき税額 ※10,000円未満の端数切捨て× 延滞税の割合(納期限から2ヶ月以内)×日数)÷ 365=金額(1円未満の端数は切り捨て)
※日数は法定納期限の翌日から完納の日、または2ヶ月を経過する日

②(納付すべき税額 ※10,000円未満の端数切捨て× 延滞税の割合(納期限から2ヶ月超 )×日数)÷ 365=金額(1円未満の端数は切り捨て)
※日数は2ケ月経過する日の翌日から完納の日
延滞税の額 = ①の金額 + ②の金額

3-3.延滞税の計算例

◆納税額100万円、延滞日数が80日(納付期限が令和5年3月1日、完納した日が5月19日)の場合。 
日数の考え方:最初の2ヶ月(3・4月):61日/2ヶ月以降(5月):19日
計算式:
①[1,000,000円(税額)×2.4%(最初2ヶ月)×61(日数)÷ 365]
+ ②[1,000,000円(税額)×8.7%(2ヶ月超)×19(日数)÷ 365]
=  ① 4,010円+②4,528円=8,538円
以上から、延滞税として8,500円(100円未満は切り捨て)の納付が必要となります。

4.延滞税は特例により計算期間の免除がある

財産を故意に隠して申告していた、などの不正行為により納税を逃れた場合などを除いて、次に該当すれば一定期間を延滞税の計算期間に含めずに免除される特例があります。

①期限内申告書が提出されていて、法定申告期限の1年後の翌日から修正申告、または更正が提出された日まで延滞税の計算から免除される

②税務調査により更正、決定処分を受けた場合、法定納期限の1年後の翌日から更正通知書が発された日まで延滞税の計算期間から免除される

➂自然災害などやむを得ない理由がある場合、法定納期限の延長が認められるため、延滞税が免除される
<やむを得ない事情の定義>
1.人為による異常な災害又は事故を原因として次のいずれかの結果が生じたこと
 ・納付すべき税額が確定したものについて、国税の納付ができなかった
 ・期限内申告または早期の期限後申告、もしくは修正申告ができなかったことにより、納付すべき税額の確定が遅延した結果、納付すべき税額の確定前の期間についても延滞税がかかってしまった

2.人為による異常な災害又は事故が生じたことについて、納税者の意思によるものではないことが客観的に明らかであり、納税者は責任を負わないこと

5.延滞税の他に追加される加算税

 延滞税は相続税の納付期限から超過した日数に応じて課されるペナルティ税ですが、加算税は納税における不備があった場合に課されるペナルティ税です。

相続税の申告・納付期限までに納付しなかった、あるいは申告内容のミスにより正しく納付されない場合は、延滞税に加えてペナルティの税金がかかります。5%~40%の税金が発生しますので、注意が必要です。

5-1.正当な理由なく期限内に申告しなかった場合は「無申告加算税」

無申告加算税は、正当な理由がなく申告期限内に申告をしなかった場合にかかる税金です。本来の税額と、申告した時期により税率が変わります。

表2:無申告加算税の税率

本来の税額から

自主的に期限内申告

税務調査通知後調査実施前に申告

税務調査実施後に申告

50万円まで

5%

10%

15%

50万円超300万円まで

15%

20%

300万円超

25%

30%

5-2.申告額が少なかった場合は「過少申告加算税」

過少申告加算税は、相続税の申告金額が本来の額より少なかった場合にかかる税金です。不足した額に応じて税率が変わります。ただし、税務署に指摘される前に自ら自主的に修正申告を行った場合にはかかりません。

表3:過少申告加算税の税率

不足した税額

税務調査の通知前に自主的に修正申告

税務調査の通知後、税務調査実施前に修正申告

税務調査後に修正申告、または更正をした

過少納税額50万円のいずれか多い方以下の額

かからない

5%

10%

過少納税額と50万円のいずれか多い方を超えた額

10%

15%

5-3.財産を意図的に隠ぺいした場合は「重加算税」

重加算税とは、相続財産を意図的に隠ぺいしたり、書類の偽装など悪質な場合にかかる税金です。税率は35%から40%と高くなります
相続財産を過少申告したことが意図的でないとみなされれば、過少申告加算税がかかります。また、期限内に申告できなかったという正当な理由があれば無申告加算税になります。

表4:重加算税の税率

相続税申告

税率

相続財産を過少申告していた場合

35%

期限内に申告をしなかった場合

40%

※重加算税について詳しくは、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

6.さいごに

相続税の納期限を過ぎた場合には、遅れた日数に応じてペナルティとして延滞税の支払いが発生します。日数が基準となりますので、1日も早く納税をしなくてはなりません。
申告ミスにより納期限後に修正申告をする場合は、延滞税のほかに加算税がかかります。特に、税務調査で指摘されてしまうと、高額なペナルティになってしまいます。

期限が過ぎてしまったのであれば、早急に正しい申告に修正して納税することが大切です。
税務調査により指摘を受けた方や相続税を申告したものの修正が必要でご不安な方は、相続に強い税理士にご相談されることをおススメ致します。

※相続税の申告が必要で「損」をしないための税理士の選び方は、こちらを参考にしてください。(当サイト内)

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